今回もエラそうなことを言ってしまって恐縮ですが・・・よろしかったらお付き合いください。1997年に発売されて以来、トヨタ自動車のシンボルとして君臨する「プリウス」。その価値を一番理解できていないのが、自動車好きな人々ではないかと思います。プリウスは全く新しいタイプのクルマとして登場し、トヨタの看板モデルへと成長する一方で、アルテッツァやセリカ、MR-Sといった個性的なクルマが消えていくことで、自動車好きから収益重視のトヨタの「象徴」として少なからず反感を買った部分もあったのだろうと思います。
発売から17年経過して、まあ私も含めてのことですが、プリウスを愛好する人々へのある種の「偏見」はまだまだ根強く残っています。プリウスを簡単に解釈すると初代のデビュー以来、基本的なコンセプトが一貫して「経済性重視」に大きく振っていて、乗り心地や静粛性を大幅に削ってまでボディを軽量化し、ガソリンエンジンのみのモデルよりもハッキリと燃費が良いことをアピールしようとしています。さらに余計なことを言ってみると、トヨタのHVシステムの実力はせいぜい従来のクルマにモーターとバッテリーを積んで重量増になる分くらいを補ってちょっと「オツリ」がくるくらいに仕上がっているわけですが、雀の涙のオツリ程度では車両価格が高くなる価値が見出せないとして、車体などに使う素材にこのクラスのクルマに使うには見合わない最先端の軽量素材を使って「オツリ」を何倍にも増やした結果がカタログ値30km/L超!のプリウスなわけです。
しかも「HVの普及」を狙って投入されたモデルなので、その為に最も重要なのは価格設定です。200万円台で売りたいという戦略のために、ベース車は100万円台の廉価車のものを使っていて、そこからさらに車体剛性の低下を伴う軽量化が施されたわけですから、従来のクルマの尺度でいうところの「走りの質感」は当然に望むべくもないですし、前述しましたが乗り心地や静粛性も従来のトヨタ車の水準からは相当に落ちるものになるのも仕方のないことです。プリウスのコンセプトに本質的な欠陥があるとしたら、もともと小排気量エンジンでそこそこの燃費を出していた小型車に、「わざわざ」HVを積んでも効果は薄いことです。
実はそんなことはトヨタを含めたほぼ全てのメーカーが共有している認識でした。よって他のメーカーは大排気量モデルにHVを付けることが、その生産台数から考えて投資には見合わないと結論するところも多かったようです。そして欧州の使用環境を考えれば「安価な」ダウンサイジングターボという有効な代替案があるので、ほとんどのメーカーはそちらへ軸足を移しました。日本市場を主戦場とするトヨタにとっては、日本の使用環境から、ストップ&ゴーがあればあるほど有利なHVに絶対的な信頼を置いていたようですが、巨額投資を回収するためには「大衆車」として売るしか方法はない!という「逆張り」戦術に出た訳です。長々と書きましたが、プリウスという存在は「トヨタの経営的選択」という要素が強いわけですから、そのクルマを評してトヨタのクルマ全体を貶めるのは正しい姿勢ではないです。クルマ好きならば、その事がよくわかっているハズですから、目くじらを立てるべきではないと思うのです。
しかし現実には、プロの評論家も分別をわきまえずに、プリウスを引き合いに出して輸入車を褒めるみたいな論調が目立ちます。もちろんHVの効果が高い、大きいサイズのクルマ(カムリやクラウン)も用意されているわけですが、売れているという事情があるとはいえ、プリウスをわざと取り上げてトヨタの「挙げ足」を取っていたりします。一般の人は十分にメリットを感じて受け入れているのに、自動車好きな人々は17年経ってもなんの進歩もなく取り残されていたりします。くだらない自動車雑誌の「道理」を履き違えた「理屈」を正論だと受け取るばかりで、自分の頭で考えようとしないからだ!と決めつけてはいけませんが、クルマが好きだという「意識」が皮肉にもクルマの本質から自らをどんどん遠ざけている節があるようです(私自身にもその傾向はあると自覚しています)。
「私はプリウスを否定してなんかいない!」という反論もあるかもしれません。実際にプリウスを褒める評論家も年々増えています。しかし、今また同じような過ちが繰り返されています。スカイラインHVが発売されましたが、これに対してまた批判が殺到しています。中には「実質15km/Lなんてたいして燃費良くない」みたいなことをいうプロライターすらいます。プリウスは実質的に「約15km/L」のクルマを「約22km/L」まで向上させたと言われています。スカイラインは先代だと「約8km/L」だったところを「約15km/L」まで向上させています。
1年で1万キロ走るとして、プリウスによってお得になる金額はレギュラーで約34,000円なのに対して、スカイラインならばハイオクで約100,000円お得になります。プリウスだと10年乗っても34万円分しか還元されませんが、スカイラインHVならば100万円!も還元されるわけです。プリウスもスカイラインHVも元々もベースモデルと比べて約50万円ほど本体価格が高いわけですが、どちらが効果が高いかは誰の目にも明らかでしょう。それなのに、そういった話は一切出てこないで、日産マークがインフィニティマークになったとか「くだらね〜」ことをプロの評論家がバカみたいな雑誌に書いているわけです・・・アホですよね? 彼はなんでそんなことを書くのか?理由は2つ考えられます。1つは本当に評論家がバカなパターン。もう1つは読者(クルマ好き)が喜ぶだろうと思って書いているパターンです。「読者をバカにするな!」といいたくなりませんか?
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