2014年11月21日金曜日

BMW3シリーズ(2015年モデル)についての所感

  初めに断っておきますが、私はこのクルマ(F30・BMW3シリーズ)はかなり好きです。とりあえず鬱陶しい東京を離れて中部地方の山間部に居を構えるとしたら、地味で飾り気こそないクルマですけども、普段の足にはなかなか良さげなクルマではないかという気がします。ただし新車で買うとなると軽く500万円を超えますから、私のような貧乏人には「普段の足」とか「良さげ」なんて気楽な話じゃ済まないですし、WRX-S4やゴルフGTIなどもう少し安くて400万円ジャストぐらいの乗り出しでも、十分過ぎる性能の「普段の足」が買えます。

  それでもこのF30・3シリーズが持つ「さりげなさ」は特別なものがあります。自分でもよくわからないのですが、クルマに対する愛情がどこからか沸々と湧いくる「風情」があります。一般的に言われている「クルマが軽くて、前後重量バランスが取れている」ことには、それほど感心していませんし、むしろその設計ゆえに「荷重移動」をあまり感じさせないので、ふんわりと「気の抜けた」ような物足りないフィーリングにすら思えます。他のクルマよりもトラクションの変化によるスイング感が無く、よっぽどの傾斜路でも無い限りは絶えず65%くらいのトラクションで巡航していきます(そんな感じです)。トラクションとは本来は絶えず許容範囲内で変化し、95%くらいで発揮されるとアドレナリンが出る?感覚がするものですが、そんな運転の楽しみ(気持ち良さ)を「ごっそり奪う」というやや掟破りの乗り味とも言えます。

  しかし無意識の内に感じて、身体が反応してしまう連続的なトラクション変化は、運転手にとっては僅かながらのストレスにもなります。そしてBMWの愛好家がしばしば貶す一般的な「国産車」はさらにアクセルレスポンスが緩く設定されていたり、CVTによる応答の遅れが重なりそのストレスを増幅させる傾向が見られます。そしてオイル交換が億劫になっているエンジンならば回転数の上昇とアクセルのシンクロが不安定だったりするので、不快感・イライラにつながることもあります。そしてBMWに比べて車体剛性が著しく劣るハイルーフの廉価車(プチバン)などは、コーナー脱出速度が低くなりがちで、減速→加速の連続操作でアクセル&ブレーキそしてミッションが絶えずストレスを引き起こしがちです。

  国産の廉価モデルのそういった特性を、BMWユーザーが徹底的に嫌がるのは、とても的を得ていますし、そう言いたい気持ちもよくわかるのですが、この一連の動作をBMW車と同等以上にストレスフリーに出来てしまう国産車もどんどん増えてきているのも事実です。その一方で従来のBMW車にはサスの固さという別の面で国産車よりもストレスフルになる弱点が顕著にありました。そこでBMWが考えたのが、そういった「メンドクサイ部分」を徹底的に排除しようということで、その意図に溢れた設計になっているのが、F30・3シリーズの8AT装備のクルマです。つまりこのモデルは日本メーカー車を徹底的に研究した上で作られています。320iに設定されている6MTモデルを試してみれば、また違う側面が見られるかもしれませんが、スポーツカー好き(非日本車的要素が好き)を自称する人ならば、とりあえずこの8ATモデルには近づくべきではない気がします。

  3シリーズの8ATを体験していて自分でもこのフィールが好きなのか嫌いなのかよく分らないです。WRX-S4のCVTには少々イライラしましたし、トヨタプレミオのCVTに至ってはアクセルオンから欲しい出力に達するまでのタイムラグがストレスの許容範囲を超えてしまいますから、その点に関してはBMW8ATの優越性はよく理解できます。先述のようなネガティブな面を割り切って考えてしまい、経済性が高く変速ショックも少なめな点を評価して「ストレスのないミッション」という意味ならば、「BMW車購入の理由」として最も多く挙げられるのが8ATなのも納得します。結局のところこの「8AT的価値観」に服従するかどうかが、その人のBMW車への評価を大きく変えるものになると思います。

  「F30は歴代最高の3シリーズ」という判断はもちろん尊重されるべきですが、その判断自体はBMWというブランドの尊厳を傷つけるものと言えます。まあどう判断するにせよ、こういうクルマを作ってしまったBMWにプライドやオリジナリティがやや欠如していることが問題なのであって、ユーザーは別に悪くはありません。乗り出し500万円余りの320iセダンに、その金額に見合う価値があるとしたら、クルマの所作の隅々まで日本車的な「礼儀」が貫かれている点です。そしてこのクルマは本来のBMWの「エンジン屋」イメージからはほど遠く、「Sモード」であってもまだまだ緩い中間加速に気がついてしまうと、まず新車で買う事を渋りたくなります。むしろ400万円で買えるゴルフGTIのほうがそのイメージに適っています。

  こんなことを書くとファンの方に怒られちゃうかと思いますが、BMWディーラーは日本市場の現実を見て、ブランド・コンセプトの発信を変える必要がある気がします。これまでのような「ストイックなスポーツ性能」を無理矢理にイメージとして植え付けても、クルマの仕上がりとの乖離に「???」な印象を与えるだけで、良識のある自動車愛好家はどんどん離れていってしまうと思われます。BMWの誇るべきものは、ポルシェやスバルのような「ストイックさ」ではなく、トヨタや日産に追従できるだけの予想外に高い「学習能力」にあります。ポルシェやスバルよりも断然にクルマに対する考え方が柔軟で、それが結果的に販売規模を大きく上回る水準の好業績として現れています。

  最近ではEVモデルの販売でも奮闘していて「バイエルンの理性」といったイメージも発信しつつあるようですが、この3シリーズのガソリンモデルも同様にやはり「理性」が際立っています。輸入車ブランドの中では最もトヨタ的な「マジメさ」をクルマから感じます。そしてトヨタグループでもスバル車からはなかなか感じられないのが「マジメさ」であり「理性」です。今後の新展開のBMWにも大いに期待したいと思います。

  
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