2014年9月23日火曜日

ドイツの「メリーゴーランド」がそんなに楽しいですか?

  ドイツメーカー車を愛好する人々のクルマ選びの基準とは? おそらく割合が高いと思われるのが、クルマそのものというよりもむしろブランドイメージで見ている人で、「メルセデスは格式、BMWはスポーティ、アウディはトレンディ」といったステレオタイプな印象に支配されている様子が、ユーザーレビューなどを読んでいると強く感じられます。そしてそこにドイツ車の一人歩きしてしまった誇張のイメージが追加されていて、まるで80年代の自動車評論を読んでいるかのような、古臭い言い回しで日本車との差異を表現しているケースが多いです。「ドイツ車はブレーキが違う!」と得意になって書いてる人もいますけど、BMW・メルセデスの現行モデルの制動力は、ホンダ、マツダ、スバルの上級グレードと比べたらお話にならない・・・というのが2010年代の常識です。ドイツメーカーでこの3社に匹敵するブレーキの実力があるのは、せいぜいポルシェのスポーツカー(911、ボクスター、ケイマン)くらいなものです。

  そんな細かいことはうだうだ言っていてもしかた無いので話を変えますが、日本車とドイツ車を比べて昔も今も決定的に違う!と言えるものに「メーカーの開発スタンス」があります。日本メーカーの実力を大いに感じることができるモデルは、「スポーツカー」「サルーン」「エコカー」「モノスペース」といった一定の目的を前提に企画されたクルマであることが多いです。話を単純にすると最高のスポーツタイヤそしてコンフォートタイヤを世界のメーカーから選ぶと、日本のタイヤメーカー(ブリジストン、横浜、ダンロップ、トーヨー)の圧倒的な独壇場になってしまうように、"テーマ"が決まっている製品では日本メーカーは圧倒的な強さを発揮するようです。

  その一方でドイツ各メーカーの魅力を端的に表現するならば、ブランドイメージを武器とした「オリジナリティ」溢れる企画力だと言えます。例えばBMWのラインナップを見てみると日本メーカーの基準において「サルーン」や「スポーツカー」に分類できるクルマはほとんどありません。日本市場で販売されるほぼ全てのモデルが、BMWの創造した「特別なジャンル」に属していて、「簡単に尺度が設定できない」「日本車では比較対象にはなりにくい」という意味で今でもベールを纏っています。そのほとんどは分析すると「サルーンにはうるさ過ぎる」し、「スポーツカーには重過ぎる」し、「モノスペース(1&2BOX)にしてはユーティリティーが低すぎる」という意味不明なものばかりです。しかしこれを有り難がるファンがたくさんいるのもまた事実です(別に否定はしませんが・・・)。

  従来はアウトバーンでの追い越し性能を重視した、「GTカー」「ホットハッチ」というジャンルが、走行環境の違いから日本メーカーにはとても真似出来ないものとしてドイツ車(欧州車)のアイデンティティとなっていました。しかし現在では自動車技術が飛躍的に高まったこともあり、生粋のサルーンとして開発されたレクサスの主軸モデルLS・GS・ISが欧州のGTカー以上の強靭で安定したシャシーを持ち、アウトバーンを250km/hで安全に走れる設計がとられています。これにより「GTカー」というドイツのセダンタイプがずっと凌ぎを削って争うことで標榜してきたスタイルは、もはや特別な競争力持たなくなってしまいました。ドイツを代表するGTカーであるBMW M5が現行モデルでは、フェラーリやランボルギーニに対抗する500psオーバーなハイスペックになってしまい自滅したという見方もできますが・・・。

  「ホットハッチ」に関してはトヨタ・ブレイドの廃止とマツダスピード・アクセラの生産休止以降は開発がほぼ止まっている日本メーカーに対して、VWゴルフGTIなどが今でも日本車にはない魅力として一定の存在感(アドバンテージ)を保っています。日本の道路でCセグに200ps以上は一般ユーザーにとってはやはりオーバースペックであり、納得できる燃費が求められるこのクラス(B、Cセグ)の日本車では、なかなか「ホットハッチ」ありきの設計へ舵を切るのが難しいようです。70〜400psといった大きな領域を同一ラインで担当出来るというVWのMQBは日本メーカーのものよりもはるかに高い応用力を持った工法といえるかもしれません。

  ゴルフ7は"GTI"や"R"を日本にもすぐに導入して「ホットハッチ」の伝統をなんとか守っています。しかし今年発売された話題のメルセデスCクラスはドイツ伝統の「GTカー」路線をあっさりと放棄して、日本の国内向けセダンをお手本にしたような「サルーン」への転生を意図しているようです。日本仕様として真っ先に導入した年内発売のグレードは全て直4ターボで、重低音を車内にまで響かせる「ドイツGTカー」のイメージをこのクルマに求めるならばAMG仕様を待つしかなさそうです。直4でも高速の合流で悲鳴を挙げることはないくらいまで車重を下げてきているところは評価できますが、RFTを履いているセダンが軒並み最新のBセグ(コンパクトカー)に乗り心地で負けてしまうという潮流もあり、メルセデスブランドとはいえ500万円以上の高級サルーンとしての価値はないように思います(あくまで貧乏人の意見です)。

  「スポーツカー」でも「サルーン」でもない、そして「GTカー」でもないドイツメーカー車が、最近では日本の道路を我がもの顏で走ってます。見かけると「乗ってる人はとりあえずクルマには興味がない人なんだな」と思ってしまいます。VWゴルフ(GTI・Rを除く)、BMW3シリーズ(M3、HVを除く)、メルセデスAクラス(AMGを除く)が日本で売れ行き好調な3台だそうですが・・・極論・暴論は承知の上で言うと、この3台にはどうしてもプリウスやカローラHVでは置き換えられない「何か」を感じることができません。静粛性や乗り心地だけでなく、最近ではトヨタTHS-Ⅱのレスポンスもかなり改善されてきたので、BMWの8ATはともかく、少なくともVWやメルセデスの簡易DCTよりは上質なフィーリングが味わえます。個人差はもちろんありますが・・・。

  この3台はブランドの「雰囲気」だけでトヨタの一般モデルよりも輝いて見えますけど、クルマにこだわる人から見ればもっとも買いたくない3台ですし、自分とは乗り方の違う実家のお袋さんなどにも絶対に勧めたくないクルマです。あえて買う理由を考えるとしたら、「とりあえず輸入車に乗ってみたい!」という人にはゴルフ、「BMWに乗ってみたい!」なら3シリーズ、「メルセデスに乗ってみたい!」ならAクラスがお手頃なのかもしれません。しかしこの3台に乗っていても、輸入車・BMW・メルセデスの"本物ユーザー"からはバカにされるのがオチですが・・・。そもそもBMWもメルセデスも年収30万米ドルを軽くクリアする顧客へ向けて"本物"が提供されるハイクラスのブランドです。そんな「貴族文化」的な乗り物のブランドイメージを通して、気分だけ少し味あわせてくれるモデルがゴルフ・3シリーズ・Aクラスです。やや失礼な表現かもしれないですが、白馬や馬車に乗った気にさせてくれる「メリーゴーランド」みたいなものだと言えます。

  「スポーツカー」「サルーン」「GTカー」「ホットハッチ」「モノスペース」「エコカー」そして「メリーゴーランド」。日本で売られているクルマはおそらくこの7種類のどこかに分類されます。日本車の中にもアクセラやインプレッサのような「メリーゴーランド」に分類されてしまうクルマもいて、それが意外に人気で売れてたりするので、結局のところ日本人はやはり「見栄っ張り」な人が多いようです。旧型の絶版モデルではありますがトヨタ・セルシオは「サルーン」としての性能は折り紙付きですから、この手のクルマに乗ってるヤンキーを、アクセラのような「メリーゴーランド」に乗っている人が"嗤う"のはちょっと筋違いじゃないか?という気がします。アクセラのクルマとしての正当性なんて、突き詰めればドイツの「メリーゴーランド」よりもいくらか安い!ってくらいなものですから・・・。マツダさん!アクセラもTURANZA(非RTF)を履こうよ!



リンク
最新投稿まとめブログ
↓スバルから実力十分のGTカーが出てきました。もはやラリーで勝つための(わけわかんない設計の)クルマじゃないです。

  

  

  

0 件のコメント:

コメントを投稿